ホワイトラビット
こんばんは〜!今日で6月最後の日なんてびっくりですね!
さて!まりあの伊坂祭り、2作品目は「ホワイトラビット」です。
新潮文庫の100冊、の中に含まれてたので買ってきましたが、文庫化されたばかりだったのですね、知りませんでした!
日頃、あるグループに属して「誘拐業」をしていた兎田は、まさかそのグループのやつらに自分の妻が誘拐されるなどと想像もしていなかった。愛する妻を助け出すため、とにかくやつらの要求である「オリオオリオ」見つけ出す、という任務を果たさなければならないのに、なぜかある家族の家で立てこもり事件を起こす羽目になり、しかもその家族は秘密を抱えていて、、、、?籠城犯 V S 誘拐グループ V S 警察 V S ???
というお話。
とにかく今回は盛り沢山です。
今まで読んだ作品は、殺し屋だったり、死神だったりと揺るぎないメインテーマがあったんですが、
これはそういうふうに、一言では言い表せず、
なんのお話?って聞かれるとちょっと困る感じ。
いろんな登場人物がお互いを欺き合い、そして我々読者をも欺いてくる。
また、いろんな蘊蓄が出てくる。「レ・ミゼラブル」や、オリオン座の話などが登場人物それぞれの思い出話だったり雑談だったりと時と場所を変えて語られる。
特にレ・ミゼラブルに関しては登場人物に冒頭で、「あの小説って所々、変な感じですよね。急に作者が〜妙にしゃしゃり出てくる」と言わせておいて、なんとこの物語においても「皆さんはお分かりかもしれないが〜」みたいに「しゃしゃり」出てくる。
今まで、「あえて説明しすぎない」ところが伊坂作品の特徴なのかなと思っていたので、すごく新鮮でした。
説明しすぎないところが好き!と思っていた人にとっては、今回に限ってめちゃくちゃ説明的なのが肌に合わないかもしれない。
ここは賛否両論あるかもしれないですね。
では、今回も心に残った、気になった部分についてネタバレしないように注意して書いていきます。
①『弱い相手を陥れて、「どうだ、俺はうまくやってるだろ」なんて思ってる奴が一番嫌いなんだよ。』
ある2人の男たちの会話。
この1人の男のセリフに対して、「別に自分が被害にあった訳でもないのに犯人に腹が立ったり、許せないと思うのはなんでなんですかね」ともう一人が返す。それに対して
「俺たちは、せっかく自分たちが我慢してルールに従っているのに、なんでお前は我慢しないんだ、そのせいで秩序が壊れてしまう、と感じるようにできている」と、答える。
これって、「悪いことをするやつらが許せない」ということについて書いているようだけど、「悪いこと」に限らないよな、と私は思います。ちょっと人と変わったことをする人が許せない人や、人の幸せをずるい!という人、今まで自分たちが苦労してきた分部下たちも苦労して当然と考える人、などなど。
自分が我慢しているのに、我慢してきたのに、違うことをする人がいると秩序が壊れるような気がするから、許せない!
という気持ちを持つ人が多いということですね。
この考え方だと一向に幸せな人が増えないし、新しいことも生み出せない、環境も良くならない。
ついつい他人の足を引っ張りがちな私たちですが、他人への思いやりを持たないといけないな、と思いました。
②俺の大事な綿子ちゃん、要するに俺の妻だよ、実際は妻とか嫁とかいうよりもまさに綿子ちゃんとしか言いようのない、ふんわりした可愛い女なんだが、その彼女が誘拐されているんだ。
これは兎田が自分の妻が誘拐されているということを相手に伝えるところ。
この説明の仕方、ものすごく、なんというか、羨ましいですよね。
「綿子ちゃんとしか言いようのない、ふんわりとした可愛い女」というのが「綿子」という名前だからしっくりくる説明とも言えますが、もしかしたら兎田は、「綿子」という名前でなくてもこんなふうに紹介してくれるのではないでしょうか。
もちろん、実際は誘拐されて命が危ないので「えー、うらやましー」とか思っている場合ではないのですが笑
妻とか嫁とかいう説明のされ方よりも、唯一無二な感じがして、愛されてる、大事にされているのが伝わってきて素晴らしいと思いました。
③罪は引力みたいなもの、地上にあるものは罪から逃れられない。罪をゼロにはできない。罪のない人間なんてありえない。
だから、できるだけ罪を少なくするのを目標にしろ。迷ったり、怠けたり、罪を犯してもいいが、正しい人になれ。
悪いことをする人ばっかり出てくる伊坂作品。マリアビートルの王子、死神の浮力の本城のように「サイコパス」も出てきますが、グラスホッパーの鯨のように罪の意識を感じる登場人物もいますよね。
ただし、これは彼らに限ったことではなく、私たち「一般人」にも当てはまります。
ふとした言葉で誰かを傷つけてしまったり、図書館から借りた本のページがうっかり折れてしまったりと、悪いことをしようとしていなくても、起ってしまう「罪」は必ずある。
大きくても、小さくても、罪を犯してしまうことは仕方ないかもしれない。ただ、できれば少ない方がいい。
そして、起ってしまったものは仕方がない。大事なのは、そのあとだ、ということ。
なんだか宗教チックですが、私も正しい人でいられるようにしたいな、と思いました。
さて、ネタバレが怖いので、付箋を貼っていた部分の中でもあまりストーリーに触れないような部分を引用してきました。
他にも、読んでてふふっとなったところとか、わぁ!ここでその伏線!みたいに感動したところにも付箋を貼ってたんですけど、
ネタバレなしでは書けないので我慢します!
かなり面白かったので、個人的にはマリアビートルと並ぶかどうか!という感じでオススメ度★4.5です。
今まで伊坂作品に手を出したことのない方にもオススメしやすい作品だったなと思います。
最近まで私も読んだことなかったんですけどね笑
それではこの辺で。
次の作品は明日Amazonから送られてくるので、今日はこのあとはボーッと過ごします〜