オーデュボンの祈り
こんばんは!忙しくて貯めてしまいましたがまりあの伊坂祭り、続いています!
3冊目はオーデュボンの祈りです。
読み終わって4日ほど経ってしまっているんですがなんとか書いていこうと思います!
何事も善は急げ!
さて、あらすじを簡単に。
システムエンジニアの仕事をやめた伊藤は、何を思ったのかコンビニ強盗に挑戦してみたものの失敗する。
逃走中に気を失い、気がつくと『荻島』という知らない島に連れてこられていた。
「未来がわかる、喋るカカシ」である優午、悪い奴を殺しても罪を問われない「桜」などの奇妙な住人のいるその島は、
江戸時代以降外界とは遮断され、いわゆる鎖国状態であった。
島の言い伝えでは「島の外からやってきた人が島に足りないものを何かをもってくる」と言われており、
伊藤はそれが自分のことなのか、と思いながらも何が島に欠けているのか解らないでいた。
そんなある日、未来がわかるはずの優午がバラバラになって殺されている。
なぜ優午は自分が殺されることを知らなかったのか?知っていたとしたらなぜ事前に助けを求めなかったのか?
というお話です。
なんと、これが伊坂幸太郎のデビュー作品とのことですが、私が今まで読んだ中ではぶっちぎりでファンタジーです。
誰も知らない島があり、カカシが喋る。未来がなんでもわかる。
物語のゴールは、その未来がなんでもわかる優午の死についての真相究明ということになります。
では、ネタバレしないように今回も感想、気になったことを書いていこうと思います。
まずは、備忘録として、私の推理です。優午は殺されることを予知していたか?予知していたなら何故誰かに事前に助けを求めなかったのか?ということに関して。
ネタバレしないように、と言いながらこれを書いたらダメな気もするのですが。。。
優午は島の住人の友人であり、なんでも知っていることから頼りにされていました。殺人が起こると、優午に聞けば誰がやったかわかる。
ただし、これから誰かが殺されるのを防ぐわけではありませんでした。
未来のことはわかるけれども、絶対に教えない。どういうわけか優午は起こったことについたことは教えてくれても未来に関することは一切教えてくれません。教えてくれたら、その殺人が防げたかもしれないと知りながら。
私はこのことから、「フェアじゃない」と思ったのではないかと思いました。
他人の殺人を防ぐ気はないくせに、自分が殺されることに関して事前に守ってもらおうとするのは、ずるいと思ったのではないかと思いました。実際心優しい優午の性格から言っていい線ではないでしょうか?
というかもしかしてみんなそう思いませんでした?
違う!私の推理はこうだった!という方はぜひコメントで教えてくださいね♪
続いて伊藤の回想から、おばあちゃんのセリフ
人生ってのはエスカレーターでさ。自分は止まっていても、いつの間にか進んでるんだ。
乗った時から進んでいる。到着するところは決まっていてさ、勝手にそいつに向かっているんだ。
だけど、みんな気がつかねえんだ。自分のいる場所だけはエスカレーターじゃないって思ってんだよ。
どうせエスカレーターは進むんだから、ゼイゼイ息を切らして働くよりも、美味しいものを食っていた方がよほどいい。
ーーエスカレーターなんてものは、どこで降りても違いはねえんだ
この時伊藤はどんな状態だったんでしょうか?
もしかしたら見落としてしまったかもしれないのですが、この時伊藤はすでに仕事を辞めてしまっていたのでしょうか?
それとも、伊藤が将来的仕事を辞めることを見据えていったことなのでしょうか?
堅実な考え方でいけば、そりゃあ働かないと美味しいものを食べることなんかできないでしょう、と思います。
しかし、もしも仕事を辞めたいな、どうしようかな、という場面で言われたのだとしたら、孫のそう言った迷いに気がついて伊藤の背中を押したのかもしれないなと思いました。
ちなみに私の祖母もよく、辛かったら辞めなさい、と言ってくれるんですが。
大学生の頃からずっと言われ続けて今になっても言われていますが、さすがにやっぱりここで辞めるのはめんどくさいな、と思って辞めないで来ています。寿退社できるような職業でもないし、きっとこのままエスカレーターにのりつづけるんじゃないかと思います。
エスカレーターに乗っているのは案外楽です、考えなくても進んでいってくれるし。
でもやっぱり心がしんどい時とか、どうしてもって時は降りるのかもしれません。
もしかして、降りても案外なんとかなるかもしれないですしね。
続いて、解らなかったことについて。
謎の多い島で事件が起こり、どんどん謎が増えていく。
しかし、終盤には伏線をしっかり回収し、真相が分かっていくすっきりするのですが、
一つわからないところが。
以前フォロワーさんも同じ謎を抱えていました。
「桜が人を殺す基準」
桜がこれまで殺していた人たちは、大抵が悪いことをした人たちでした。
ただし、わざわざあの人が悪いことをしていた、と教えにこられてもわざわざ殺しに出向くわけではない。
桜が殺す時、相手に言う言葉はこうだ。「うるさい」。
そして拳銃を向けられて命乞いをしたり、言い訳をしたりする人に「理由になってない」と言い、銃を撃つ。
序盤のエピソードでは「悪い奴を懲らしめてくれる奴」と言うイメージでしたが、途中でサラッと
花を眺めていただけの主婦と、5歳の娘を殺したという事実を聞かされます。
何故?桜は悪いやつを殺すのではなかったのか?
これに関しては最後まではっきりと説明はありません。
なので、私も自分なりに考えてみました。
まずは桜と伊藤の話からヒントを得ます。
桜はいうことには。
人はうるさい、うるさいのは嫌いだ。
正気でいるために人を撃つ。正気でいるために銃と詩が必要だ。
死よりは詩の方がいい。俺は桜になりたい。舞う、舞って散る。景色を桃色に変える。
全員を撃つことはできない。
このことから、伊藤が考えたことは
「彼が本当にやりたいことは、ナイフのように研ぎ澄ました詩を弾倉に詰めて、誰かれ構わずにそれで撃ち殺すことなのかもしれない。
しかし、この世の中に存在する人間を全員撃ち殺すことはできないので、価値のない人間の代表を独断で選び出して撃っている。
そうではないだろうか」
さらには終盤で、桜は活躍します。桜としてはいつも通りのことをしたまでなのですが、
読者にとっては大活躍です。
ある人物と対峙する場面。そこでこのように描写されています。双子が向かい合っているような幻想的な場面。
これはつまり、この人物と似ている、ということ?
それは、自分の理想のために人間がどうなっても構わない、という点で似ていたのでしょうか。
ではこれらのヒントをもとに考えます。
花を眺めていただけの主婦と5歳の娘が殺された理由。
①娘が単純にうるさかった?
それは笑い声だったかもしれないけれど、桜にとってはうるさいものに変わりなかった。
娘が撃たれたため、母親は怒ったか泣き叫んだか、いずれにせよ、やはりうるさかった。
または、娘に向けられた銃に立ち塞がり先に死んでしまった。
②娘が花を摘んでいた?
これは描写にありませんが、親子で花を見ている時に、小さな娘が花を摘むことは十分にあり得ることではないでしょうか。
眺めていただけ、ではなく花を摘む=命をつんでいた。だから撃った。
③花を見に来た桜にとって、親子がただ単純に邪魔だった?
もともと人間という存在が邪魔だった桜にとって、花の咲く風景に入り込む親子が邪魔だったのかもしれません。
ちょっと乱暴かもしれませんが、言ってしまえば桜はただ撃っただけなのかもしれない、と思いました。
桜はそもそも人間側ではなく、自然を贔屓する側の、「彼」の仲間であると考えれば、すきアラバ誰でも撃つ可能性はあります。
④親子は以前何か悪いことをしてしまった?
これは違うかも、と思いつつ。悪いことをした、価値のない人間から選んで殺していたという説だけを信じれば、
やっぱりこの親子も何か悪いことをしていた、ということになります。
花を眺めていることそのものが気に食わなかったのではなく、ちゃんと桜に殺される理由があった。
うーん、書けば書くほどやっぱり④は違うと思うなぁ。
さて、皆さんはいかがでしょうか?どのように考えますか?
もしかしたらもっとヒントがあったのかもしれませんが、わたしにはこれ以上はわかりませんでした。
ということで、今回はこんな感じで、謎ののこる不思議なお話でした。
個人的にはすごい、めでたしめでたしでよかったです!
マリアビートルと一二を争う感じで、めちゃくちゃおすすめです!
一つの記事を書くのに結構時間がかかるので、この次の作品の記事はまた明日以降になりそうです。
それではおやすみなさーい!