本を読むとすぐに感化される人の読書記録

読んだ本の記録がなんとなく誰かの目に触れてほしい気がする。

海の見える理髪店

こんばんは☺️

今回は珍しく短編集のこちら!

荻原浩 著、海の見える理髪店 です。

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荻原氏の作品は、「神様からひと言」を読んで以来。最近本屋さんにたくさん並んでるのを見かけるので、読み返したいなと思っているところです。

 

さて、この海の見える理髪店は、家族をテーマにした6作品が収録されています。表題作は「よまにゃチャンネル」で斉藤壮馬さんが朗読してくれるのです。

いい声です。最高壮馬です。あまりのいい声に寝落ちしました(だめじゃん)

 

全体的に、終わり方が綺麗だな、という作品が多かったです。どちらかというとポジティブな感じで終わっているものが多い、気がする。

ただ、一つ読み終わって、ふう、イイハナシダッタナ。と一息ついてから

ん???てなる。

ここからはネタバレしないと書けないので、これから読む方は戻ったほうがいいかもしれません。

 

 

 

 

まず、表題作の海の見える理髪店。

大物俳優が贔屓にしていた腕の持ち主が、都会を離れひっそりと海の見える場所で理髪店を営んでいる、ということで訪れた「僕」。

もともとそういったたちなのか、「僕」が自分にとって何者なのか気づいていたのかはわからないが、その店主は身の上話を聞かせながら僕の髪を切ったり、髭を剃ったり、マッサージしたりしていた。のちに自分が酒に酔った勢いで人を殺したこと、それをきっかけに奥さんや息子と別れたことなどを語る。

そして僕の頭の傷をみて、その傷はね、ブランコから落ちた時のものですよ、と言う。そして僕はというと、来週、結婚式があるんですと伝える。

僕も、店主も知っていたのだ。自分たちが親子であると言うこと。

つまり、このお話は、父親の居場所を突き止め、結婚前に客として父親に会いに来た息子のお話なのだ。

結局、2人は店主と客としてお別れする、という流れになっていて、綺麗に終わる。イイハナシダッタナとなる。

だけどちょっと考えてしまうのだ。

ん?どんなにイイハナシのように終わっても、酒に酔って人を殴り殺したことは事実だし、そのせいで2人目の妻や、息子と離れ離れになった。

酒に酔って1人目の妻に暴力を奮って離婚しているのも事実だ。

今回客として訪れた息子の心境は?結婚することくらい伝えてもいいか、という感じか?

人はそうそう、変わらない。もし、人を殺して刑務所に入るタイミングで妻と別れていなくても、おそらく酒に酔ってなにかしらしでかし、息子には嫌われていたはずだ。

これまで離れていたからこそ、再開するこの物語が美しく見えるのであり、文章が綺麗だからイイハナシに感じるのであって、手放しで「わー!よかったねぇぇ泣」とはならなかった。これは私が捻くれているせいなのだろうか??

 

もう一つ、2作品目の「いつか来た道」というタイトルのお話。

杏子という名の女性が、弟に言われてしぶしぶ疎遠だった母親に会いに行く。

母親は絵描きであり、娘の杏子にも絵を描くことを強要し、友達とも遊ばせてくれなかった。自分の好きな洋服を選んできると決まって「その服は何?下品だから脱ぎなさい」と難癖をつけてきた。あんなに執着されていたのに、美大の受験に失敗すると手のひらを返して何も教えてくれなくなった。杏子はそんな母親に愛想をつかして出ていき、すでに40代になっていた。

母親の面倒は主に弟が見てくれていたが、突然会いに行ってみてくれと言われた。弟が海外に転勤になることをきっかけに、杏子はその後釜を押し付けられそうになっているのだ。

久々に会う母親は変わらず自分を中心に世界が回っているような振る舞いで、杏子はイライラとしていたが、絵具が乾いたパレットやカビたお茶の葉を見て異変に気づく。

母親は認知症が始まっていた。杏子の名前も思い出せず、思い出したかと思っても、杏子に向かって「今日は娘が会いに来るの」という始末。

あんなに厳しくて、嫌いだった母親が、今ではすっかり呆けている。抽象的な絵を描いて、これは夫、これは杏子、これはうちの猫、可愛いのよ、と説明する。逸子さん(母親)はどこにいるの、と絵の中の母親を探して尋ねると、「私はここにいるじゃない」と少女のような無邪気な声で答えるのだ。

杏子はそんな母親を見て、つきものが落ちたかのように、なんとなく母親を、そしてその母親に虐げられてきた自分を許すような雰囲気を醸し出す。。。

 

よかったね、イイハナシダッタナ。

終わり方はやっぱりとても綺麗。

でもやっぱり捻くれている私は思うのです。

自分は好きなだけ人の嫌がることをして、認知症になって全部忘れるんだ。

人間は、自由に生きたもん勝ちなんだ。

物語の終わりは、「母親とのわだかまりが和らいだ」という形を取っているけど、私は全然許せなかった。

絵を描くことを強要されて、怒られて、受験に失敗すると才能がなかったのねと見捨てられて。そうじゃなかったら違う道を選択できた杏子の人生を台無しにしたんじゃないのか??

 

 

ということで、すごく文章が落ち着いていて、綺麗なお話だったんだけど、

私にはなんだか綺麗すぎたなと思う作品たちでした。

おすすめ度は★3

物語の内容自体が面白くなかったわけじゃないんです。いろんな考え方があるし、考えさせられました。

他の人の意見も、聞いてみたいなと思いました。

 

 

それでは!!また〜★