本を読むとすぐに感化される人の読書記録

読んだ本の記録がなんとなく誰かの目に触れてほしい気がする。

マリアビートル

こんばんは〜!

最近職場が変わって家に帰れるようになった、まりあです☆

今回は伊坂幸太郎著「マリアビートル」

です。

伊坂作品初心者、まだ三作目になりまふ。読み終わったあと気付いたのですが、本当は先にグラスホッパーを読んだ方が良かったみたいですが。。。

読んでなくても面白かったです。(今度グラスホッパーも読むぞ)

 

◯あらすじ◯

舞台は東京から岩手に向かって走る東北新幹線、はやて。

同じ車両に「物騒なこと」を生業とする者たちがそれぞれの目的のため集結してしまう。ある者は敵討ち、ある者はそれを待ち構え、ある者は仕事でトランクを運び、ある者は仕事でそのトランクを奪おうとする。狙う者、狙われる者が交錯する新幹線。彼らはそれぞれの目的を果たすことができるのか?

 

というお話、具体的な、新幹線に乗ってる物騒な登場人物たちは

 

①木村。ある中学生に息子を死の瀬戸際まで追い込まれ、その中学生が新幹線に乗ることを知って復讐のために新幹線に乗る。元殺し屋。

 

②王子。木村の息子に危害を加えた中学生。優等生のように見える。人の心の動きに興味をもち、言葉や演技を駆使して人を動かすことを楽しむサイコパス

 

③蜜柑と檸檬。長髪で長身、同じような見た目の二人組。蜜柑は冷静で小説を好むが檸檬はやや短絡的な性格、機関車トーマスが好きでキャラクターの説明文を暗唱できる。依頼人の息子を助けトランクと共に依頼人へ送り届けるため、新幹線に乗っている。

 

④天道虫。気弱でとにかく不運の持ち主だが物騒なことに関して仕事の評価は高い殺し屋。蜜柑と檸檬の持ち物であるトランクを奪って上野で降りる、という仕事のために新幹線に乗っている。

 

以上5人がメインキャラクターで、それぞれの目線から物語が描かれています。

整理してみると、新幹線を移動手段として使っているのは蜜柑と檸檬だけなのですね。(本当はほかの人物も岩手に用があるみたいでしたが。)次第に蜜柑と檸檬もただの移動どころではなくなり、それぞれが悪意と自らの信じる正義をもつてバラバラに行動しているため、ところどころで相互作用を生じさせながら一つ、また一つと場面が展開していきます。

電車の中での事件、というとオリエント急行殺人事件みたいですが、単純に時間か起こり乗客が巻き込まれて行くのとはまた違っています。この新幹線では少なくとも4種類以上の「悪意」が蠢き、それでも新幹線は各駅に停まる以外、通常の運行続けてノンストップ、周りの一般を巻き込むことなく進みます。

そこため、文庫本にして570ページという長編小説にもかかわらず、非常にスピード感があります。まるで読者も新幹線に乗っているみたい。もちろん、岩手につくまで降りられません。

 

さて、①から④それぞれに焦点を当ててみたいと思います。ネタバレも含みますのでよろしくお願いします🤲

 

 

まずは②から。この王子、というやつが伊坂作品に特徴的な悪意なのではないかと、初心者の僕は考えました。

ヒルと鴨コインロッカーでは、この悪意にきちんと焦点は当たっていませんでしたが、野良猫などを虐待する様子、特に大きな理由もなく主人公達に関わってきて、気に食わなかったので危害を加えようとおいかけてくる様子。このものすごい治安の悪くて不穏な奴が伊坂作品にはもしかして欠かせないのではないでしょうか。

王子は、そういった類の悪意を持っていて、①から④の中で明らかに異質で厄介な存在です。

私は、人がだれか他の人に意図的に危害を加える時はそれ相応に理由がある時だと思います。①の木村のように復讐だったり③や④が任務を遂行するために必要な時だけ戦ったりするように。理由がなんであっても他人に危害を加えてはいけないという前提はとりあえず置いといて、「だから俺はお前を始末しないといけないんだ」と理由があって行動する分には納得するし、普通はそうやって悪意を正当化するものなのです。

しかし、②の王子だけは違って、彼の悪意は正当化する気なんか全くなく、ただの興味本位で、自分本位で、ものすごく不穏なんですよね。王子の悪意にだけは共感できず、ただ不安になる。そういう登場人物を描くのが非常に上手だな、と思う。実際に身近に絶対いて欲しくない、というか現実世界に存在して欲しくないなぁ。

 

一方①の木村に戻りますが、こちらはただのアル中で、あまり頭も良くない、よくいるダメなやつです。息子が重体になったのも元はといえば自分が余計なことに首を突っ込んだためだし、復讐といいながら結局は王子の罠にハマってしまいます。かと言って自分のせいで息子がこんな目にあった、とはそれほと考えてもいない様子。ただただ怒りを他人にぶつけることしか考えられない人はやはり視野が狭いですから、王子みたいに賢いやつに太刀打ちできるはずがないのです。

王子よりはマシだけど、私はこいつも嫌いです笑

 

④の天道虫は、めちゃくちゃ不運、ではあるものの不運であることを自覚して行動できているし、機転がきくし、短絡的でもない。一番応援したくなるやつでした。

途中でうすうす感づいていましたが、この物語の主人公は彼なのかなと思いました。タイトルであるマリアビートルの意味は知りませんでしたが、天道虫の仲間の名前が「真理亜」であること、ビートル、とついてるので名前が虫である彼が関係あるんじゃないかなぁと思いながら読んでいました。

ほかの読者も彼を応援していたんじゃないかな。(王子はなんらかの制裁が加わってほしいな)

 

残るは③の蜜柑と檸檬。この名前はきっとコードネームなんでしょうね。

コナンに出てくる黒ずくめのメンバーがお酒の名前であるみたいな。作中で、そんなに重要人物ではなさそうでしたが「桃」という名前の女性も出てきたような気がするし、もしかしたら林檎とか葡萄とかいうやつも仲間にいるのかな、ふふ。

冒頭にも書いたように檸檬は短絡的、というかアホという思慮深くないというか。そのせいで大切なトランクを見失ってしまうわけですが、ちょっと憎めない部分もあります。賢い蜜柑がなぜ彼と一緒に仕事をしているのかはよくわかりませんでしたが、彼もきっと檸檬を憎めなかったんでしょうね。

性格や好みが全く違う2人はお互いに好きなものを押し付け合うもののお互いに興味を示す様子がありません。蜜柑は小説をおススメし、檸檬機関車トーマスのキャラクターの名前を覚えろと言うものの蜜柑はキャラクターの名前は覚えていないし聞き流す。檸檬が小説を読む様子もありません。

 

しかし、この2人の好感度がめちゃくちゃ上がるエピソードがあるのです。

ネタバレになってしまうのですが。。。。

 

 

 

最後の方で檸檬が王子の毒牙にかかり殺されてしまい、だれが殺したのか、と蜜柑と王子が会話する場面があります。

蜜柑が檸檬の死体を調べると、以前蜜柑がおススメした小説がお尻のポケットから出てきます(しかも読んだ形跡がある!!!)

 

そして蜜柑は王子の服に機関車トーマスのあるキャラクターのシールが貼られているのを見つける。それは檸檬が「そいつは意地悪。ウソをつくし、信用するな」というキャラクターのシールであることに気づき真相にせまる。

 

えーーー!??!!

なんでこの2人組んでるんだろ、と思っていた彼らにこんなエピソード持ち込まれたら、なんか尊くて拝みたくなりました。なんだろう、友情でもなく、時間を共に過ごした人と人とのつながりを感じました。エモい。ボキャブラリーはどこかへ逝きました。もともとないけど。

 

 

ということでもともとわりと気に入っていた2人だったのですが物語から退場する最後の最後に好感度が上がりました。おかげで王子への嫌悪感も増悪したわけです。

 

 

さて、ただ登場人物の好き嫌いを述べただけになってしまったような気がしますが、こんなところで笑。   

本当に、面白かったなぁ。

ということでこの勢いで、このあとAXを読むことにしました。(グラスホッパーは手に入りませんでした。。)

また殺し屋のお話みたいです。今度はどんな殺し屋なんでしょう。

 

それではまた〜!