蜜蜂と遠雷
こんにちは、まりあです。
ずっと気になっていたのに読まないでいた、恩田陸 著「蜜蜂と遠雷」を読んだので記事を書いていきます!
これは日本で行われたある年のピアノの国際コンクールのお話。様々な遍歴のあるコンテスタントたちがそれぞれの思いを胸に臨んだコンクール。音楽の神様は誰を愛し、誰に微笑むのか!!
あらすじをまとめるとこんな感じになるでしょうか??
一次予選参加者は48人。二次に残れるのは24人、三次に残るのは12人、そして本選では6人だけが残り、実に2週間以上かけて行われるコンクール。
参加者の中で特にピックアップされて描かれているのは栄伝亜夜、高島明石、マサル・カルロス・レヴィ・アナトール、そして風間塵の4人です。
亜耶は20歳、天才少女と呼ばれていたが、支えてくれていた母の死の直後のコンサートから逃げ出して以来、ステージでピアノを弾くことを避けてきたが、恩師に勧められてコンクールに出ることになった。
マサルは19歳、少年時代日本で過ごした頃に仲良くなった少女にすすめられてピアノを弾き続け、完璧な技術と音楽性を身につけてきた優勝候補。
明石は音楽店勤務のサラリーマン、コンクール出場者の中では年齢の高い、28歳。妻子をもち、サラリーマンとして働きながら時間を見つけて練習をしてきた。なんとか今回だけ参加させてくれ、と家族に頼み「ラストチャンス」のつもりでコンクールに臨む。
風間塵は養蜂家の息子として父を手伝い、世界を飛び回る16歳。世界的に有名で様々な音楽家に尊敬されていたが弟子を取らないとしていたユウジ・フォン=ホフマンから師事され、推薦状を持ってコンクールに初めて参加する。ひとところにとどまらない職業の父を持つために彼自身ピアノを持っておらず、行く先々でピアノを見つけては弾き、ホフマンがそこに赴き教えていたという。弟子にしてほしくてたまらなかったが涙を飲んできた音楽家たちにとって、ホフマンがわざわざ訪ねて行って教えるなど前代未聞であり、大注目のルーキーであるが、本人はそんなことを気にすることなく、ホフマンとの約束、「音楽を外に連れ出す」を果たすべく、音楽に向き合っていく。
大雑把なあらすじとメインの登場人物の紹介が終わったところで、読書感想文を書いていきます。
箇条書きにすると、主に2点ほど。
①音楽を文学にする、表現力がすごい
②コンクールはゴールではなく、スタート地点、通過点。
まずは①について。
著者、恩田陸の表現力がとにかくすごい。この作品では一次予選から本選にいたるまで、コンテスタントが弾く曲が全て予め決まっており、その場面でどの曲をひいているのかわかるようになっています。その曲の特徴のほか、コンテスタントが弾きながら考えていること、感じていること、そして聴衆が聴きながら感じていることが事細かく描かれています。
私はクラシック音楽に造詣が深くないのでその場面で演奏されている曲をイメージしながら読むため、YouTubeで検索して聴きながら読みました。
「ゆったりとした、木管のオープニング。何かが始まる、何か大きくて素敵なことが始まる。そんな予兆に満ちた、ゆるやかに上昇するメロディに弦楽器が加わる。」
曲の導入に関して特徴を描いている部分ですが、聴きながら「ほんとだ!!何か素敵な事がはじまりそうだ!!!」と思いました。音楽を聴いて、こんなふうに感じて、言葉に変換して、共感を得る。
そんな表現力の豊かさに感心しました。
しかも、マサルが弾きながら感じていることも、「複雑なメロディラインを針の穴をくぐるようにして走っていくのは、ジェットコースターに乗っているような快感だ」などと表現しており、「うわ、そんなん弾けたら気持ちいいんだろうな(ただし私はジェットコースターは好きではない)」と思いました。
なかなかコンテスタント達の境遇が特殊なこともあり、感情移入、という点では共感の得られる物語ではないかもしれませんが、音楽を言葉に変えて臨場感たっぷりに読者を引き込む、著者の感性の豊かさが感じられるお話だったなと思います。
②について、コンクール、といえば何を思い浮かべるかというと。
まずは沢山の参加者の中で優劣をつけられて順位を決める、「競争」という印象と、あとは
練習の成果を出し切るイベント、集大成でありそこに照準をあわせるため「ゴール」という印象でありました。
競争、という点では二次予選に残れれば御の字、できればそれ以降も残りたい、という気持ちの明石に関しては「他者との競争」という側面も強くありましたが、仕事をしながら限られた時間での練習で臨んだコンクール、という点で戦っていたのは自分自身、コンクールは自分との戦いである、という面のほうが強か描かれていました。優勝候補で余裕のあるマサルや今までピアノに関して争う必要のなかった風間塵は別として、栄伝亜夜も自分と戦わなければいけないコンテスタントの1人でした。
母の死をきっかけにコンサートをボイコットし今まで逃げてきた亜夜について、今回のコンクールの参加によって「天才少女の復活劇」と揶揄されながら、このコンクールに出ることになんの意味があるのか、この後も音楽を続けていけばいいのか、と悩む場面もありました。
ということで亜夜にとってコンクールは自分との戦いであったと考えられますが、マサルや風間塵の演奏に影響を受けながら、逃げてきた音楽に向き合い、これからも音楽を続けていきたい、という心情へと変わっていき、その点からいうと、今後も音楽を続けていく上でのスタート地点になりました。
明石も、今回で音楽は最後にしよう、だからこそ力を出し切る、というゴールとしてのコンクール参加でしたが二次予選に進めたこと、奨励賞に選ばれたことから自分の音楽が予想よりも受け入れられて評価を得たこと、そして昔応援していた亜夜が復活し、しかも亜夜が自分の演奏を聴き、今後も聞きたいと言ってくれたこと受けて勇気をもらい、今後もやはり音楽を続けていく、という決心をしました。ゴールのつもりが、スタートになってしまいました。
他2人にとってはどうでしょう。
風間塵にとっては初めてのコンクール。師匠である音楽を世界に連れ出すという約束の第一歩を踏み出すことができました。
マサルにとってももともとコンクールにゴールという意味はなかったとは思いますが、コンクールで他者の演奏に影響を受けながら「新たなクラシックをつくる=作曲したい」という目標を持球した。マサルにとってもまた、作曲家になる未来へのスタート地点となったようです。
音楽を通して、若い人たちがぶつかり合い、そしてそれぞれの道を見出して進んでいく、そういった輝かしい未来への期待がもてる作品でした。
ちなみにこちら、まだ文庫化はしていませんが続編があるようですね。
文庫化するかな。。、待たずに読みたい気もしますね。。。。!
さて、長くなりましたが読書感想文は以上になります。クラシックを聴きながら読むのにオススメの本でした!
今読見始めた本はサクサク読めてしまっているのでそう時間を開けないうちにまたブログ更新できそうです!
さよーならー